南米コロンビアの首都ボゴタにある日本語学校、EDUCACIÓN COLOMBOJAPONESA(コロンボ・ハポネサ)では、日本が大好きな350名の生徒が学んでいます。1994年の開校以来、日本から教員を迎え続けているので、生活全般のサポート体制も万全。コロンビアでの生活が初めてでも安心です。同校理事長のニンフェル先生も、日本に深い愛情をお持ちの一人。今回のインタビューでは、コロンビアの生活や、教員に求められるスキルなどについて、詳しいお話を伺いました。

EDUCACIÓN COLOMBOJAPONESA 理事長
ニンフェル先生
1994年、日本語を学習し始める。98年に日本語講師の道へ進み、02年に国際交流基金の研修で日本へ。2010年にコロンボハポネサ理事長就任。
年間を通して涼しく、食材も豊富で暮らしやすい

――コロンボ・ハポネサは、どんな学校ですか。
現在、350人の生徒が当校で日本語を学んでいます。コロナ禍以降、オンライン受講者も増えました。日本での就労を目指すコース、日本での進学を目指すコース、日本でのビジネス展開を目指すコースのほか、コロンビアには日本の漫画やアニメなどのカルチャーが大好きな人がたくさんいますから、趣味として日本語を学びたい人のためのコースもあります。それぞれの目的に応じて、授業の内容や進度を変えています。
当校は開校当初からずっと、日本人の教員を日本からお迎えして、授業をしていただいています。現在、日本人の教員が8名在籍しています。日本に帰国した後も引き続き当校のオンライン講師として働いてくださっている先生もいます。
――ニンフェル先生はとてもきれいな日本語を話されますが、日本に住んだご経験がありますか?
いいえ、住んだことはありません。もちろん行ったことは何度もあります。当校の生徒たちに日本の文化や生活を見せてあげたくて、なるべく毎年、生徒たちと一緒に日本を訪れています。
――日本とコロンビアの生活はどのような違いがありますか。
当校のある首都ボゴタは、赤道直下にありますが標高2600メートルなので年間を通して涼しく、過ごしやすいです。食べ物や生活、治安に関しては他のいろんな国とさほど変わらないと思います。おそらく日本の方にとって一番ネックになるのはコロンビア人の、のんびりした気質でしょう。南米特有のラテン気質というか、良く言えばおおらかですが、日本人のようにきっちり時間を守らない人が多いです。10分、20分は平気で遅刻してくる生徒もいるので、以前うちで働いてくださった日本人の先生の中には「せっかく学費を払っているのに、どうして時間通りに来ないのか理解できない」とショックを受けていた方も。それもコロンビア人にとっては「ちょっと真面目過ぎるんじゃない?」という感じなんですよね。日本人の先生方には、このことを最初の面接のときに必ず話すようにしています。

――実際に日本から来た先生方は、そうしたコロンビアの文化や気質にすぐに慣れますか?
どうしても馴染めなくてストレスを溜めて体調を崩してしまった先生も過去に2、3人いました。でも近年、特に若い方は海外のことをよく知っていますし、「コロンビア人はそういうものだ」と、うまく割り切って適応する方が多くなってきているように思います。
――コロンビアの食生活は日本と比べてどうですか?
日本は一日三食の中で夕食がメインですが、コロンビアは昼食がメインです。日本の食事と比べると量は多めですが、安くてヘルシーですよ。野菜や果物の種類も豊富で、一年中手に入ります。日本で見たことないようなものもたくさんあると思います。今までこちらに来られた日本人の方には、コロンビアの食事は概ね好評でした。もし飽きても、日本食のお店もありますし。
嬉しいことに、最近ボゴタのスーパーマーケットでは日本の食材が簡単に手に入るようになりました。お米や海苔、お醤油、餅、ワサビなど何でもあります。

仕事もコロンビアの生活も、きめ細かくサポート
――日本人の先生を募集しているそうですが、どんな方に来てほしいですか?
まず、日本語教師としてコロンビアの就労ビザを取得するためには、420時間の日本語教師養成講座を受講している必要があります。加えて、三年間以上の実務経験がある方だと、さらに良いですね。
「とりあえず日本を出たい」「どこでもいいから外国で暮らしてみたい」というような安易な考えだと、苦労するかもしれません。ラテン文化が好きな方、興味がある方のほうが、現地の生活を楽しめると思います。スペイン語のスキルは問いませんが、日本にいる間に100時間程度勉強して来ていただければ、こちらでの生活がよりスムーズになるでしょう。
授業では、日本語だけではなく、日本の文化やマナーも教えてくださる方だとありがたいです。例えば書道や着物の着つけ、盆栽、生け花など、日本の伝統的な文化に一つでも詳しい方がいらっしゃれば。実際、将棋や三味線を教えてくださった先生がいて、生徒たちは大変喜んでいました。

――採用から入国までの流れを教えてください。
分からないことばかりだと思いますので、最初の採用面接の段階から、当校のことや、こちらでの生活のことは詳しくお話ししています。コロンビアに渡るまでの間、私たちとの面談は4回。1回目は採用の可否を決める面談ですが、2回目以降はコロンビアでの生活や、気を付けること、どんなサポートがあるかなどについて詳細をお伝えします。住む場所も、その時に相談しながら決めていきます。ボゴタではアパートの賃料が高額なので、ホームステイ先か、もう少しプライバシーが欲しい方にはシェアハウスをこちらで探して手配します。いずれにしても、学校から徒歩か自転車で15分以内のエリアに住んでいただくことになると思います。ホストファミリーのビデオメッセージやシェアハウスの映像なども、事前に送ります。
コロンビアに到着したら、私たちが空港にお迎えに行きます。時差が14時間ありますので、1~2日しっかり休んでいただいた後、買い物の仕方やお金のおろし方など生活に必要な情報、安全に過ごすためのルールや近づかないほうがいいエリアなども詳しくお伝えします。ボゴタは以前と比べてかなり治安が良くなっていますが、それでも場所によっては危険なところもあるので。さらに1~2日休んだ後、学校をご案内します。

――授業に入るまでの流れはどのようになっていますか?
2~3週間かけて、すべてのクラスに入っていただいて、それぞれの先生の教え方をじっくり見学していただきます。それから授業の進め方や、デジタル機器、出欠管理システムの使い方などをレクチャーします。ほとんどの先生が2週間から1ヶ月程度でマスターできる内容だと思います。2~3週目ぐらいから少しずつクラスをお任せしていきます。
当校には8名の日本人教員のほか、2名のコロンビア人教員やスタッフもいますので、仕事のことでも現地の生活のことでも、分からないことや困ったことがあったら何でも相談していただきたいと思います。
生きた日本語と、日本の文化・マナーをコロンビアで教えてほしい
――かなり手厚いサポートがあるので心強いですね。日本語は、やはりネイティブの日本人の先生が教えることに意味があるのでしょうか。
私自身、日本語で時々つまづくことはあるものの、スムーズにコミュニケーションができるようになったのは、日本人の先生に“生きた日本語”を教えていただいたおかげだと思っています。当校の生徒たちも、日本人の先生が生きた日本語と日本の文化、マナーまで教えてくださるので、みるみる成長して良い仕事や勉強の機会を得ることができています。本当にありがたいことです。
――求職者の方にメッセージをお願いします。
私はコロンビア人ですが、日本の良いところをたくさん知っていますし、もしかしたら日本人より日本のことを好きかもしれません。日本には素晴らしい文化があり、宝のように大切な国です。そう思っているコロンビア人が本当にたくさんいます。日本から遠く離れたコロンビアで日本がどれだけ愛されているか、ぜひ肌で感じていただたきたいですね。
そして日本の美しい言葉や素晴らしい文化をコロンビア人に伝えてください。日本をより深く愛し、日本社会に貢献する素晴らしい人材に育つでしょう。もちろん卒業後に日本へ行く生徒ばかりではありませんが、現地でも日本の文化やマナーが浸透することで、より良いコロンビア人が増え、コロンビアという国ももっと良くなるはずです。
