北陸初導入の“ふくい外国人コミュニティリーダー”で外国人住民と地域の共生を進める福井県

約2万人の外国人住民が暮らす福井県(2025年12月末時点)。「育成就労制度」の2027年度開始によって、より一層の多国籍化と人口増が予想されています。そのような情勢の中、(公財)福井県国際交流協会と県は「ふくい外国人コミュニティリーダー」の育成に注力しています。
現在は約100名のリーダーが、行政や防災の情報を母国語で分かりやすく補足してSNSで発信するほか、外国人住民の困りごとの吸い上げなどを行っており、行政・地域と外国人住民の橋渡し役として活躍しています。また、橋渡し役に留まらず、災害時支援のほか、日常的なコミュニティ支援や交流活動などに自発的に取り組んでいるリーダーもいます。
ふくい外国人コミュニティリーダー発足の背景や現状、外国人住民との共生における課題などについて、福井県国際交流協会の山下依里佳さんに伺いました。

目次

外国人住民数の更なる増加と多国籍化

――外国人コミュニティリーダー制度の導入は、北陸では福井県が初ということですが、もともと外国人の住民数が多かったのでしょうか。

 大都市圏の都府県と比較すると、外国人住民数自体は多いとは言えません。2025年12月末時点で、県内の外国人住民数は2万人を超え、県総人口約73万人のうち約2.8%程度となっています。
 しかし、近年の法律・制度の変更により、今後は外国人住民の増加がさらに加速すると予想されています。その流れについてご説明します。
 まず、県内在住外国人の国籍についてですが、現在は85の国・地域にわたっています。ブラジル、ベトナム、フィリピンの3か国で1万人を超えていますが、この10年ほどで急速に多国籍化が進みました。
 市町別では、特に外国人住民数が多いのが越前市と福井市で、いずれも6千人台と県内で突出しています。福井市は県庁所在地で人口も最も多く(約25万人)、外国人住民が集まりやすい地域となっています。一方、越前市は人口約8万人ですが、大手電子部品メーカーの工場が立地しており、1990年の入管法改正を契機に日系ブラジル人を労働力として受け入れてきた経緯があります。現在も2世・3世の方が多く居住しており、ブラジルにルーツのある方の割合が高い地域となっています。
 また、この2市以外の市町においても、県内の基幹産業である製造業・農業・漁業の分野を中心に、技能実習や特定技能の外国人材が就労しています。
 今後は、外国人労働者の受入れがさらに進むことが見込まれています。特に、特定技能2号では家族帯同が可能となるため、これまで以上に、日本語を十分に話せない方を含めた「生活者としての外国人」が地域に増えていくことが想定されます。

福井県国際交流協会

行政と外国人コミュニティの橋渡し役として

――どういった背景があって外国人コミュニティリーダー制度が始まったのでしょうか。

 もともとは、福井県と、私たち福井県国際交流協会が連携して事業を進める中で、2020年頃に、外国人住民の方へ災害情報が十分に届いていないという課題が見えてきたことがきっかけでした。
 また、外国人住民にとって日本での生活は、言葉の壁だけでなく、制度の違いや文化の違いなど、さまざまな心理的・社会的な壁があります。こうした壁や課題の解消に向けた検討を進める中で、「県内に長く住み、地域のことをよく理解している外国人住民の方に力を貸していただけないか」という発想が生まれ、本制度の創設につながりました。
 現在は、20の国・地域出身、105名の方に外国人コミュニティリーダーとして活動いただいています。リーダーの情報は、県および福井県国際交流協会だけでなく、各市町および市町の国際交流協会とも共有しています。

 制度の中では、行政や国際交流協会からの情報を、リーダーを通じて地域の外国人住民に伝える役割があります。
 また、市町で外国人住民に関する課題が生じた際には、リーダーの知見やネットワークを生かして対応を一緒に考えることや、国際交流イベントの運営等に協力いただくこともあります。
さらに、こちらから情報を発信するだけでなく、コミュニティの中で困りごとが生じた場合には、リーダーから行政や協会へ情報が共有される仕組みとなっており、双方向の情報連携ができる体制となっています。

 “リーダー”という言葉から、人の上に立つ存在をイメージされることもありますが、本制度においては、「信頼されている人」「キーパーソン」「行政と地域をつなぐ橋渡し役」としての役割を重視しています。
 さらに、元ALTでアメリカ出身のキャサリンさんを、県が地域おこし協力隊「ふくい多文化共生プロモーター」として委嘱しています。キャサリンさんには、外国人コミュニティリーダーの中心的存在として、県・県協会とリーダーをつなぐ役割を担っていただいています。また、リーダーへのインタビュー等を通じて、リーダーの活動や人となりを発信し、制度の認知度向上にも大きく貢献いただいています。

外国人コミュニティリーダーの役目

――やはりリーダーになる方は、福井県在住歴の長い方が多いのでしょうか。

 制度開始当初は、在住歴の長い方や、すでに地域で行政等と関わりの深い方を中心に、各市町から外国人コミュニティリーダー候補として推薦いただいていました。
 最近では、先輩リーダーから「この方はどうか」といった形で推薦していただくケースも増えてきています。

――制度としてはかなり定着してきたということですね。

 そうですね。リーダーの具体的な役割として、現在、主にお願いしていることが大きく3つあります。
 「SNSを活用した情報発信・伝達」「ニーズ調査やアンケートへの協力」「災害に関する研修会や訓練への参加」です。
 SNSを活用した情報発信・伝達については、国や地域によって主に利用されているSNSが異なります。例えば、中国ではWeChat、ブラジルではWhatsApp、ベトナムやフィリピンではFacebookが主流です。
 そのため、まずリーダーとはLINEでつながり、グループLINEを作っています。県からそのグループへ情報を発信し、リーダーは各コミュニティのSNSを活用して、必要に応じて母語で分かりやすい補足等を加えて発信していただいています。
 例えば、中国人コミュニティは規模が大きいため、役割分担をして情報を伝達してくださっています。情報を受け取り翻訳する人、翻訳内容を確認する人、WeChatで発信する人といった形で連携されています。
 ニーズ調査やアンケートへの協力については、実施回数は多くありませんが、今年度(2025年度)は県の「多文化共生推進プラン」の改定年度であったため、リーダーを通じて外国人住民向けアンケートへの協力をいただきました。そのほか、行政や大学等が実施する外国人住民向け調査への協力や、外国人コミュニティ内の困りごとの吸い上げなども、この活動に含まれています。
 災害に関する研修会や訓練への参加については、県・協会、各市町が主催する研修や訓練に積極的に参加していただいています。災害に関する知識を身につけることに加え、地域の中で顔の見える関係を築いておくことも、災害時には非常に重要になります。
 そのほかにも、月1回のオンラインミーティングへの参加、同国出身者の生活サポート、メディア出演、福井国際フェスティバルでの母国紹介などにも協力いただいています。

――リーダーの方々は色々な任務に協力してくださっているんですね。災害と言えば、2024年元旦に能登半島地震がありましたが、まさにこの制度の出番だったのではないですか。

 そうなんです。グループLINEの通話機能を活用し、リアルタイムで相談や情報共有を行うことができました。
 リーダーの方々は、石川県に住む同国出身者からSNSを通じて早い段階で被災状況を把握し、その情報を私たちを通じて石川県側に共有することもできました。
 また、コミュニティ内で支援物資を集め、自家用車で被災地まで届けたリーダーもいらっしゃいました。

――すごい。自立した活動が行えているんですね。

 最近は、そのように主体的に活動してくださるリーダーが増えてきました。
 福井県の山間部は積雪が多い地域もありますが、そうした地域に住むリーダーがコミュニティ内でボランティアを募り、大雪の際に小学校の雪かきを行った事例もあります。
 今後は、こうしたように、コミュニティリーダー自身が主体となって活動を企画・実施する場面をさらに増やしていきたいと考えています。

全県的な広がりはこれから

画像引用元:Map-It

――この制度が磨かれていくと、新たに福井県に来る外国人の方もより住みやすくなるでしょうね。

 それが、当制度や多文化共生に関する体制については、県内でも地域によって差があるのが現状です。
 福井県国際交流協会がある福井市は、県を南北に分けた場合の北部(嶺北)地域に位置しています。また、県内で最も外国人住民数が多い越前市も嶺北地域にあります。嶺北地域の他の市町については、外国人住民対応の体制がまだ十分に整備されていないところもありますが、困りごとがあった際には、協会につないでいただけるケースが多くあります。
 一方、南部(嶺南)地域の市町では、多文化共生に関する認識や取組が未整備であったり、立ち上がり段階にあったりする地域が多くあります。そのため、外国人住民から行政へ相談があった際に、どの部署が対応すべきか整理されておらず、結果として相談対応がスムーズにつながらないケースもあります。
 こうした地域間の認識や体制の差は、今後取り組んでいくべき課題の一つだと考えています。

――全県的な温度差の解消が喫緊の課題なわけですね。

 そうですね。その解消に向けて、来年度(2026年度)から進めていきたいと考えているのが、公民館など地域の拠点と外国人コミュニティリーダーとの連携です。福井県では、小学校区ごとに公民館があり、地域活動の拠点となっています。そうした地域の身近な場所に、外国人コミュニティリーダーが関わることで、地域の中でリーダーたちの力が、より自然な形で発揮されるようになればと思っています。
 また、公民館が地域住民と外国人住民との接点になり、お互いの顔が見える関係が少しずつできていけば、結果として距離も縮まっていくのではないかと考えています。
 あわせて、来年度(2026年度)からは、日本語教育の体制づくりについても、県全体で取り組んでいく予定です。今後は、日本語をほとんど話せない外国人住民も増えてくることが想定されます。そうした方々が地域の中で孤立しないように、外国人コミュニティリーダーの方々にも協力していただきながら、地域の中で支えられる仕組みをつくっていきたいと考えています。

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