別府大学:大分県唯一の大学発・日本語教員養成課程は教職と同時取得可能!

大分県別府市。全国屈指の温泉地であり、多くの外国人留学生や住民が暮らすこの街に、県内で唯一、大学として日本語教員養成課程(※現在は経過措置対象)を設置している別府大学があります。
今回は、2000年から同課程を中心となって牽引してきた文学部国際言語・文化学科教授である篠崎大司先生にお話を伺いました。

(記事公開日:2026年3月25日)

取材にご協力いただいた先生

別府大学 文学部国際言語・文化学科教授
篠崎 大司 先生

愛媛県出身。東北大学教育学部卒業、広島大学大学院日本語教育学研究科修了。修士(教育学)。

専門は日本語教育学。現在、ブレンディッドラーニングが主要テーマ。具体的にはICTを活用した日本語教員養成を行っている。。また、日本語教育に関する総合サイト「篠研」や、日本語教員試験受験生に対するメルマガ「合格水準 篠研の日本語教員試験対策」、現職日本語教師に対するメルマガ「篠研の“日々成長する教師”」を運営している。
主著に『日本語教員試験 対策用語集』(アルク)など。

目次

国語が一番苦手だった高校時代から、日本語教育の道へ

――貴学の日本語教員養成課程は、篠崎先生が赴任されてから始まったんですか?

そうですね、私は2000年から本学で勤めているんですが、ちょうどその年から日本語教員養成課程も始まり、立ち上げから関わっております。

――立ち上げからなんですね。その前は日本語学校で教えていらっしゃったとお聞きしました。

静岡にある、本当に小さな民間の日本語学校で教えておりました。そこでも日本語教員養成講座を開いてましたから、私自身は養成に関わって30年ぐらいになります。

――30年ですか。篠崎先生は元々日本語が好きだったり、興味があったりして勉強されてきたんですか?

いえいえ、高校の時は国語が1番苦手でした。夏休みの読書感想文を出さなくて、しばらく現代国語の時間は廊下で勉強したっていう…。大学も元々は日本語教育じゃなくて、教育哲学だったんです。大学院から、日本語教育になったっていう感じですね。
大学2年か3年の時に見ていた雑誌に日本語教師が紹介されていて。教職はしがらみが多そうだったのでやりたくないなと思ったけれども、教えること自体は嫌いではなかったので。それに日本語教育だと、世界中どこでもできるじゃないですか。そこで自分の席が1つあればいいなと思い、やってみようかなと。
私は当時、東北大学の教育学部にいたんですが、文学部で日本語教育をやっていて。今はお亡くなりになった音声学の大坪一夫先生や、日本語教育方法研究会の会長をされていた才田いずみ先生が授業を持っていらっしゃったんです。「これだったらついていけそうだな」と思って、3・4年時に授業を受けて、1年留年して、広島大学の大学院で日本語教育に進学したっていう流れですね。

――最初は日本語教育自体には興味があるわけではなかったけれども、学生の時からずっと関わっていらっしゃるんですね。その中で次第に面白くなってくるものですか?

面白くなってきますね。日本語についてよく言われるのは、曖昧な表現が多いとか、非論理的だとか。

――ボロカスに言われますよね。

そうそう。でも文法とかいろいろなことを突き詰めていくと、ものすごくシステマティックだし、それは日本語特有じゃなくて、深めれば深めるほど全言語に共通するような性質もあって。「全然曖昧でも非論理的でもなくて、それはあなたが日本語のことを深く知らないからそう言ってるだけだよ」っていう感じですね。

学内で実習が完結するカリキュラム

――どのくらいの人数の学生さん日本語教員養成課程を選択するんですか?

本学は主専攻でもなんでもないので、本当に少ないんですよ。少ない時は1名から、1桁ですね。10人いないぐらいです。

――別府市は外国人住民数がすごく多いので、日本語教師の需要があって受講者も多いのかなと勝手に想像していました

留学生が多いのは、主にはAPU(立命館アジア太平洋大学)さんが多くて、うちは以前は非常に多かったんですが、今はそうでもないんですよね。本学で日本語教員養成をやっていることも、あまり認知が広がってないのかもしれないんですが。オープンキャンパスで紹介することもあまりないので、本当に興味関心のある学生だけがやってくるっていう。 ただ、最近はやっぱり国家資格化になったので、社会人の方が科目等履修で受けに来られるようになって、少し増えてますね。

――カリキュラムはどういう特徴があるんですか?

大きな特徴は、学内で実習ができることです。他の大学でよくあるのが、近隣の日本語学校に委託するとか、海外の提携大学に行かせるとか。

――すごくよく聞きます。

本学の場合は学内に日本語教育研究センターがあって、通常の学生の時間割に沿って、「金曜日の2限目が実習」といったように組めるんです。週に1度の日本語教員養成課程の授業を前期15回、後期15回といった感じでできるので、他の授業に支障が出ないんですね。そこが1つ大きな特徴かなと。
本学の学生は、教職の授業を取りながら日本語教員の資格取得を目指す者も多いんですよ。「2週間他の日本語学校に実習に行ってください」となってしまうと、その間は大学の授業を休まないといけない。そうなったら教職の科目が取れなくなってしまうんです。そういったことがないように。本人の努力次第ではありますが、教職も取れるし日本語教員も取れる。時間割の中で全部消化できるのが、学生にとっては一番負担が少ないんじゃないかなと思います。

――確かにそれは特徴ですね。他の大学さんだと1週間海外に行って実習を受けるなど、よく聞きますので。

ちょうど今、文部科学省の方も、小中高校に外国人児童生徒が増えているので、登録日本語教員の資格を持った教員を増やしていきたいって推しているんですよね。本学の場合はそれがうまく型にはまってる部分があるので、そこはやっぱり強みかな。

温泉の街・別府ならではの環境と、学生たちの進路

――貴学には大分県内から進学してくる学生さんが多いんでしょうか本語教員と教職取れて、市内で温泉三昧もできる、すごくニッチな大学だと思いますが。

学生は県内に限らず九州各地、宮崎や福岡からも集まっていますね。
本学には「温泉学」という授業があって、温泉にちなんだ地質とか歴史を扱う授業もありますね。
私自身も温泉巡りが趣味で、88カ所の温泉を巡るスタンプラリーを3周もやりました。温泉に行き過ぎて飽きてしまったくらいです。
大分県、特に別府は観光地なので、留学生も卒業後にホテルや観光施設に就職したり、自分でレストランを経営したりする学生が結構います。
別府には結構いろんな国の人がいるんですが、町全体としては割と落ち着いている感じ。不思議な街ですよ。

――特殊な街ですよね。進路のお話が出ましたが、教職を取らないで日本語教員の資格を取ろうとする方は、どういう進路を考えてらっしゃる傾向がありますか?

一番多いのは、日本語教育と関係なくて一般企業に就職するケースです。あとは、福岡の日本語学校に就職して主任を務めて、第1回の登録日本語教員試験に受かった教え子もいます。
留学生が試験を受けるパターンもあって、数年前にいた台湾の女子学生は入学時点でN1を満点で取って入ってきて、在学中に日本語教育能力検定試験に合格しました。あと、10年ほど前の中国の留学生は、養成課程を修了した後に九州大学の大学院に進学しました。中国で日本語学校を作りたいと言っていました。また別の中国人の留学生は、帰国して中国の短大で日本語を教えています。

学内の留学生相手だけに手を抜けない

――優秀な留学生がいらっしゃるんですね。先ほど「学校内で実習をされる」と伺いましたが、実習の相手は学内の留学生ですか?

そうです、N3とN2の間ぐらいの留学生を相手に。基本的に話は通じるので、彼らにスピーチとかディスカッションを教える授業の中で実習をやっています。

――教壇に立つ学生さんは、実習が始まった頃と終わった後で変わるものですか?

やっぱり全然違いますね。最初の授業だと、自分が用意した教案を進めるのでもう頭がいっぱい。アドリブが利かないわけですよね。それが、実習が終わるぐらいになると、留学生の日本語力に応じて個別にアドバイスができるようになる。授業の進め方を頭の中で調整しながら臨機応変にできるようになっていきます。

今、実習は通年で(※現在は経過措置のプログラムとして実施)、前期は中級前半のクラスで45分の実習を2回、後期はもう少し上のレベルのクラスで実習を2回。通年で4回ですね。期間が空くのが却っていいんじゃないかなと思うんです。自分が教えた留学生とキャンパスで顔合わせたりしますからね。

――期間が空くことで緊張感が持続するでしょうし、実習が終わった後も自分が教えた学生さんと顔を合わせるなら、いい加減な教え方できませんよね。

そうそう。食堂で会ったりして。

大分県の日本語教育を絶やさない。重大な使命

――科目等履修生で入ってる社会人の方も同じように実習するんですか?年齢層はどうですか

全く同じように実習します。年代は50代か60代ですね。先日、今年卒業する学生さんと食事したんですけど、そこに一人社会人の方がいて、この前の日本語教員試験にも合格されたんです。 高校の先生を定年退職された女性の方で、勤めていた高校に外国人の方がいて、その相手をしているうちに日本語教育に興味を持ったと。その方、この4月からは本学の留学生別科で先生を始められます。

――すごいですね、学ぶ意欲が。高校から大学へ場所を変えて教え続けられると。

本学の日本語教員養成課程で有資格者の教員を育成して、別科の方に送り込むという流れができつつあります。県内の大学としては本学しか養成課程がないものですから。

――篠崎先生としても教えがいがありますね。

ありますね。こうやって制度が変わって、日本語教員の資格がないともう教壇に立てないとなったわけで。そうすると、県下で日本語学校が2つあるんですけど、やっぱり登録日本語教員がいなくて困っているんです。本学は大学本部の他にも、県内の大学や短大で日本語教育を行っていらっしゃるところに教員を送り出しているので、本当に本学の養成課程がなくなると、大分県の日本語教育が潰えてしまうっていう…。その使命感はありますね。今後は試験ルートでも実践研修の場が必要になりますし、本学がないと大分県内でその場もなくなってしまうと。

――大分県的にもすごく困りますよね。留学生が集まらなくなる一因になってしまう。

うん、そうそう。留学生の受け皿がなくなるんですよ。それに、これから国が就労系の外国人にも一定の日本語能力を身に付けさせる研修を行う方針ですよね。その研修も登録日本語教員がやらないといけないことになってくると、本学がなくなってしまったら今度は県内に就労系の外国人の受け皿までなくなってしまうっていう。

――就労する外国人とその家族が今後さらに増えるわけですからね。九州いうとどうしても福岡にいろいろなものが集中して、大分など他の県は手薄になりがちですが、だからこそ余計に貴学の存在は貴重だということですよね。

そうですね。そういう地方こそ、相対的に外国人労働者への依存度が高くなりますし。この流れは変わらないでしょうから、どうしましょうっていう感じで。割とのんびりやってますけどね(笑)。

これから日本語教員を目指す人へ

――最後に、これから登録日本語教員の合格を目指す方、勉強しようという方にアドバイスをお願いします。

まずは何からやってもいいと思います。本屋に行って関連する本を読むでもいいし、とりあえずネット上の情報で情報収集するのもいいし。何でもいいので、とにかく「一歩踏み出す」ことですね。
ひとまずやってみてこそ、「またこれはどうなのか?」という疑問が出てくると思うので、そしたらまたそれでリソースを追いかけていくでもいいし。身近に日本語教師の先生がいらっしゃったら、そこで話を聞くでもいいし。

「最初から一番いい方法を!」ってなってしまうと、結局一歩を踏み出せないので。最初は多分空っぽの状態なので、何からやっても得るものはたくさんあると思います。まずはこだわらずに情報収集をやってみるのが一番いいんじゃないかなと思いますね。

――下調べで人生が終わってしまうぐらい情報量が多い時代ですから、気になったら一歩動いてみる、やりながら考えるということですね。大分県の日本語教育を支える貴重な取り組みについて、楽しいお話を伺えました。ありがとうございました

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