成田空港に近く、農業も盛んな千葉県富里市では、技能実習生や外国人労働者の増加に伴い、外国人住民の割合が県内でも高い地域となっています。地域に暮らす外国人が増えたことで、日本語によるコミュニケーションや生活ルールの理解、行政手続きなど、少しずつ課題も生じるように。現場で感じている変化と課題、日本語教育の必要性について富里市総務部市民活動推進課の成毛さんにお話を聞きました。
空港と農業が呼び込む外国人住民
◆空港と農業が呼び込む外国人住民
―千葉県富里市は、全国の自治体の中でもベスト10に入るぐらい外国人比率の多い市だということですが、どういった背景があるのでしょうか?
一番大きい理由は、成田空港に近いことだと思います。市内には海外から来た研修生が1か月ほど研修を受ける施設もあり、外国人の出入りが多いんです。
また、富里市はスイカやニンジンなどの産地でもあり、農業が盛んなので、農業の技能実習生も多いですね。
単純に人数だけで言えば、県内だと千葉市や船橋市の方が圧倒的に多いですが、住民に占める外国人比率は当市の方が高いです。
―国籍としては東南アジアの方が多いですか?
そうですね、フィリピンやベトナム国籍の方が多いですが、最近急激に増えてきたのはスリランカの方です。
スリランカの方は仲間意識というか、コミュニティの結束力が強いのか、家族や知人を頼って集まってくる方が多いように感じます。
市内には外国人が経営する食料品店なども増えています。

外国人相談窓口の強化
―富里市の多文化共生に関する施策はいくつかあると思いますが、大きなところでいうと相談窓口の体制強化が挙げられるでしょうか?
そうですね。もともと外国人相談窓口はあって、以前は週2回・半日だけ開けていたのですが、外国人が増えてきたことから現在は平日毎日9時から17時まで相談員が対応できる体制にしています。
―相談は英語で対応するのでしょうか?
英語で8割くらいは対応できているかなと思います。ご本人が話せなくても友人・知人が話せるケースも多いので。
どうしても対応できない場合は、タブレット等の翻訳端末を使うこともありますが。
―相談内容としてはどんなことが多いですか?
一番多いのは税金や各種申請といった行政手続きに関することですね。マイナンバーの作り方だとか、入管や大使館への手続きを案内したりすることもあります。あとは日本のルールやマナーについての相談も多いです。
地域生活で生まれる課題
―「ゴミ出しのルールが難しい」といったことは他の自治体でもよく聞きますが、生活面では地域コミュニティとの摩擦が生じることもありますか?
言葉が通じないので、地域の方が注意したくてもできないという声があります。怖くて声をかけづらいという人もいたり。
そういった状況が生じていたので、今年度の最初に外国人の方向けに生活マナーマニュアルという冊子を作成して、転入手続きに来られる方にお配りしたり、外国人の集まるお店に置いてもらったりしました。
言語としては英語、シンハラ語、ベトナム語、それからやさしい日本語の4種類用意したので、地域の方からそれを渡してもらったり、やさしい日本語の冊子を使ってコミュニケーションをとったりという形で活用してもらっています。

日本語を学びたい外国人は多い
―逆に外国人の方から日本語が通じない、分かってもらえないという相談もありますか?
はい。そういった相談が最近増えていて、日本語を学べる場所を教えてほしいという相談は非常に多いですね。
市内では国際交流協会や市民団体が日本語教室を運営しているので、それらの団体と連携しながら相談に来られた方には日本語学習の場を案内しています。
ただ、日本語学習ニーズが急増しているので、少しでも担い手を増やせないかということで、今年度は県の協力を得て、やさしい日本語を教えられる人材の養成講座を計6回開催しました。
講座には30人ほど参加していただいたのですが、中には「やさしい日本語に興味はあったものの具体的に活動はしていなかった」という方もいらっしゃったので、そういった方には市内の活動に参加してもらうよう案内させていただいたりもしました。
その他、市役所職員向けのやさしい日本語講座も年に一回ですが開催しています。

持続可能な日本語教育の必要性
―30人も受講者がおられたというのは少しびっくりしました。やさしい日本語に関心のある市民の方も結構いらっしゃるんですね。
そうですね、正直最初は人が集まるだろうかと少し心配していたのですが、予想以上に興味を持ってくれる方が多かったのは嬉しい発見でした。とはいえ、市民団体が中心になって活動している現状では、やさしい日本語を教えられる人材の絶対数としてはまだ足りていないと思います。
行政主体の日本語教室の可能性も検討はしていますが、課題も少なくありません。日本語教員を配置するとなると当然ですが経費が発生しますし、外国人労働者の勤務シフトなどにより、継続的な学習が難しいケースも意外とあるみたいなんですね。
ボランティアにおんぶにだっこ、というのも考え物ですが、だからといって行政が費用面も含めて全面的に担うのも簡単ではありません。
どのような形であれば、急増する日本語教育ニーズに持続可能な形で対応できるのか―これは今後の大きなテーマかもしれません。

日本語教育が地域社会を支える
―外国人住民が増え続ける富里市において、多文化共生という面で一番重要なことは何だと思われますか?
日本で生活する以上、日本のルールや地域のルールを理解してもらうことが大切だと思います。地域に溶け込むことで、日常生活は勿論ですがいざというときにもお互い助け合うことができ、それは外国人にとっても元から住んでいる日本人にとっても良いことであるはずです。
そのために私たち行政としては、そういったルールの周知・啓発に力を入れていきたいと考えていますが、その上でも「言葉」はとても重要な要素だと思っています。富里市のみならず、日本全体で定住する外国人が増えている今、日本語を教える人材の必要性は確実にありますし、その重要性も今後更に大きくなっていくのではないかと思います。

