白百合女子大学(東京都調布市)は、少人数教育や充実したサポート体制で知られる、歴史のある女子大学です。今回は、国家資格「登録日本語教員」の制度化で関心が高まる「登録日本語教員養成プログラム」について、同大の国語国文学科・武田加奈子教授にお話を伺いました。
国家資格化にもスムーズに対応
――貴学の「登録日本語教員養成プログラム」の特徴を教えてください。
武田先生:様々な大学が日本語教育のプログラムを置いていますが、本学の特徴の一つは国語国文学科に設置されている点です。教育学部や国際系の学部ではなく、国語国文学科に置かれているのは、他大学と少し違って不思議に思うところかもしれません。
――まさに日本語の「本丸」という印象を受けます。
武田先生:そうですね。本学のプログラムには約30年の歴史があります。国語国文学科の学生から日本語教育を学びたいという声があがり、その当時の教員が設置に動いたという記録が残されています。もちろん、現在はどの学科の学生でも学べるようになっています。
――国が本腰を入れ「登録日本語教員」制度が始まりましたが、新制度に合わせて貴学のカリキュラムは変わったのでしょうか。
武田先生:実は、中身はそれほど変える必要がありませんでした。先輩の先生方が作った過去の充実したカリキュラムから、「最低限この科目を取ってください」と整理しただけで、割とすんなり新制度に対応できました。大学としての蓄積があったのはありがたいですね。
――具体的にはどのような部分を整理したのですか。
武田先生:国語国文学科をベースに作っていたため、言語系の選択科目をふんだんに入れていたのですが、そこから必要最低限のものを必修として残しました。ただ、それ以外の科目も大学の授業としては残っているので、深く学びたい人は自由に履修することができます。新しい登録日本語教員養成プログラムでは、1年生の後期から履修を始めています。
――毎年どのくらいの学生さんが受講されるのでしょうか。
武田先生:登録日本語教員養成プログラムの運用開始後は、毎学年15名ほどが受講しています。
――学生さんは、自分が当たり前に使っている日本語を「外国語」として捉えることに最初は戸惑いませんか?
武田先生:みんな戸惑いますが、まずはそこに「気づく」ところからだと思っています。最初の履修科目として日本語学の概論や異文化理解の授業を置き、日本語や日本文化を客観的に見る視点を持ってもらいます。例えば「『コップ』と『カップ』はどう違うんですか」と聞かれて、「あー、説明が難しいな」と実感するところから始まりますね。こちらとしても、まずは違いに気づいてもらわないといけませんので。

教員が必ず引率。安心で実践的な国内外での教育実習
――貴学では昔から実習が必修だそうですね。
武田先生:はい、昔から実習科目を必修にしていますし、海外実習もプログラムの開設当初から行っています。特に、実習には必ず本学の教員が引率としてついていくのも特徴です。女子大ですのでご心配になる親御さんもいらっしゃいますから、安心していただけるようにしています。
――具体的な実習先や期間を教えていただけますか。
武田先生:現在、国内実習と海外実習があり、海外は台湾と韓国の大学が1校ずつありますが、それぞれ10日間ほど滞在します。引率は私を含め日本語関係の教員が毎年誰か担当しています。現地の大学には大変よくしていただいています。生活の面倒から授業見学まで快く受け入れてくださり、本当にありがたく思っています。現地の学生さんとの交流の機会も多く、充実した学生交流が行われています。
――国内での実習はいかがですか。
武田先生:国内の場合は日本語学校で行います。こちらは一気に10日間行くのではなく、まずは学校見学や授業見学、そして何日間かの実習…というように、少し期間をあけて通っています。その間にも色々と課題が出ますので、学生は忙しいと思います。
――教わる立場から教える立場になることで、学生さんの様子は変わりますか。
武田先生:「自分がこの時間を担当して教えなくちゃいけないんだ」と自覚できると、皆ピリッとしますね。「人前で話すのが苦手だったけれど、実習でやらなくちゃいけない状況になって、やっているうちに自信がつき、苦手ではなくなった」と話す学生もいます。
――ちなみに、先生ご自身も学生時代に海外で教えられた経験があるのですか?
武田先生:私の学生時代の実習は学内だったのですが、資格を取った後にロシアのモスクワへ行って2年ほど教えていました。モスクワ滞在はロシア語の文字がやっと読めて、簡単な自己紹介ができるようになったところからのスタートでした。マイノリティとしての社会生活は、今の研究や日本語教員指導につながるいろいろと貴重な経験になりました。

日本語学校から海外進学まで、多様に広がる卒業後の進路
――歴史がある貴学のプログラムですが、卒業生の皆さんはどのような場所へ就職されているのでしょうか。
武田先生:国内の日本語学校に就職した人もいれば、フランスへ渡って現地で教えている人もいますし、台湾での実習がきっかけで現地の大学院に進学し、そのまま就職した人もいます。ほかに、大学で教員をしていたり、小学校の日本語指導員になったり、外国にルーツを持つ家庭をサポートする団体を立ち上げたりなど、本当に進路は多様です。日本語教育とはそういう幅広い分野なのだと思います。
――最後に、このプログラムを履修する学生さんに期待することがあればお願いします。
武田先生:「自分の母語を話すことで相手に喜んでもらえる職業」って、他にはなかなかないですよね。卒業してすぐに先生にならなくても、ここで勉強したこと、経験したことを覚えておいてほしいです。いつか学んだことが役に立つ時が来るかもしれないので。他の資格とは違って、様々なところに活かせたり、すぐに使わなくてもあとで役立てることができるのも登録日本語教員養成プログラムの良いところだと思います。実習の準備などは大変なので、とても自分の可能性を広げる学びだとはすぐには思えないかもしれませんが、、、そこは耐えて、、、いろいろな経験を楽しんで履修してくれると嬉しいです。


