【大会要約】令和7年度 文部科学省日本語教育大会― 認定日本語教育機関の申請を考える学校が知っておくべきこと ―

  1. 日本語教師ジョブトップ
  2. ブログ一覧
  3. 【大会要約】令和7年度 文部科学省日本語教育大会― 認定日本語教育機関の申請を考える学校が知っておくべきこと ―

【大会要約】令和7年度 文部科学省日本語教育大会― 認定日本語教育機関の申請を考える学校が知っておくべきこと ―

2026年1月28日、文部科学省主催による「令和7年度 日本語教育大会」がオンラインで開催されました。今年度のテーマは「認定日本語教育機関」。これから認定申請を考えている日本語教育機関にとって、制度の考え方から、実際に認定を受けた学校のリアルな取り組みまでが共有された、非常に実務的な大会でした。この記事では、大会全体を「申請を考える学校向け」に絞って要約します。

| 文科省がはっきり示したメッセージ

まず、文部科学省の行政説明で強調されていたのは次の点です。

・認定日本語教育機関は留学・就労・生活分野における日本語教育の中核
・教育課程は「日本語教育の参照枠」を参照して編成・運用されていること
・単なる形式的な基準適合ではなく教育の質を維持・向上させ続ける仕組みがあるかが問われる

つまり、認定申請とは「今やっている授業を説明すること」
ではなく、「学校として、どんな日本語教育を設計し、どう改善していくのかを示すこと」だと、はっきり示されました。

| 基調講演:留学生政策と日本語教育の位置づけ

基調講演では、一橋大学の太田浩教授が登壇。ポイントは非常に明快です。

・世界的に留学生の移動は拡大している
・日本は依然として日本語教育機関が留学の入口になっている
・しかし、日本語教育、高等教育、就職、この接続はまだ弱い

今後は

・日本語教育機関が「留学→進学→就職」をつなぐ役割を担うことが不可欠
・認定日本語教育機関は、その接続点として制度的に位置づけられ始めている

という整理でした。

| 認定を受けた学校の事例発表(ここが一番参考になる)

① 大阪YMCA学院(大阪府)

▪️特徴

・認定申請を機に、教育理念から見直し
・日本語教育の参照枠を踏まえ、新カリキュラムを開発
・行動中心アプローチを本格導入

▪️リアルな声

・参照枠の理解に時間がかかった
・教員の間で「この教え方でいいのか?」という不安もあった
・ただし、模擬試験の結果などから文法・言語知識もきちんと身についていることが確認できた

→ 大きく変える場合は、研修と検証が不可欠という好例。

② 与野学院日本語学校(埼玉県)

▪️特徴

・これまでの教育を全面否定せず「変えたこと/変えなかったこと」を明確に分けて対応
・教材は維持しつつ言語活動別の目標・評価を追加
・自己評価・ピア評価・ポートフォリオを導入

▪️ポイント

・「今までやってきたことをゼロにしない」
・教育の質を落とさず、現実的なマイナーチェンジで対応

→ 既存カリキュラムに一定の自信がある学校のモデルケース。

③ 帝京平成大学附属日本語学校(東京都)

▪️特徴

・大学附属校としての強みを活かした設計
・大学との連携(授業体験・推薦制度・施設利用)
・パフォーマンス評価やポートフォリオ評価を本格導入

▪️示唆

・認定日本語教育機関は高等教育機関との連携がしやすくなる
・大学側にとっても「連携先が見えやすくなる」メリットがある

④ 大崎市立おおさき日本語学校(宮城県)

▪️特徴

・全国でも珍しい公立の日本語学校
・地域人口減少・人材不足への対策として設立
・学校・学生寮・地域を一体で設計

▪️ポイント

・地域住民向け説明会や体験授業を重ね、理解を獲得
・日本語教育を「地域づくりの中核」に据えた事例

???? 生活・就労分野への広がりを強く意識したモデル。

| 各校に共通していた「申請のリアル」

事例発表から、共通して見えたポイントは以下です。

・申請は通常業務と並行すると相当きつい
・コアメンバー(校長・主任・事務)の負担調整が重要
・参照枠は「理解→設計→運用」まで落とさないと意味がない
・評価はテスト一辺倒から、多様な評価へ

多くの登壇者が口をそろえていたのは、

「書類を作る作業より、学校の教育を言語化する作業の方が大変だった」

という点でした。

まとめ|これから申請を考える学校へ

この大会から読み取れる結論はシンプルです。

・認定申請は「書類作成」ではない
・教育課程・評価・運用を一体で説明できるかが問われる
・学校ごとに「大きく変える」「少しずつ整える」どちらの道もあり得る
・大事なのは自校に合った変え方を選ぶこと

認定申請は確かに大変です。ただ、多くの認定校が語っていたように、

「教員同士で、日本語教育について本気で話す機会になった」

という副次的な価値も、確実にあります。

これから申請を考える学校にとって、今回の文部科学省日本語教育大会は、「失敗しにくくするための実例集」と言える内容でした。