2025年9月、文部科学省は令和8年度の日本語教育関連予算として 総額224億円（前年159億円から大幅増） を概算要求しました。地域日本語教育の全国展開や空白地域の解消、生活者としての外国人支援、日本語教師の養成・研修強化など幅広い施策が盛り込まれています。

なかでも、「認定日本語教育機関」を目指す学校にとって特に注目すべきは、「日本語教育の参照枠」に基づくカリキュラム編成・質向上支援事業（新規・35億円要求） です。認定申請に欠かせないカリキュラム整備や授業・評価方法の見直しを国が後押しする内容であり、これまで「自力で対応するのは難しい」とされてきた部分に具体的な支援が届くことになります。


文科省 概算要求資料（PDF）を開く

この記事では、文科省の資料をもとに、

・認定日本語教育機関を目指す学校はこの予算をどう活用すべきか
・日本語教師に広がるキャリア展望

この2つの視点から詳しく解説します。

何が起こるか？

・市町村レベルでの日本語教育体制が拡大
・「生活Can-do」に基づいた授業が全国標準化
・ICT教材や地域コーディネーターの活用で、授業の幅が広がる

教師のキャリア展望

これまで地域日本語教育は「ボランティアベース」が主流でしたが、予算が拡大することで常勤・非常勤の有償ポストが安定的に増える見かもしれません。

・自治体や国際交流協会との委託事業に教師が関わるチャンス
・医療・福祉・教育など専門領域と連携した生活直結の日本語教育が増加
・学校＋地域のダブルワーク、キャリアの複線化も可能

日本語教師の仕事は「教壇」から「地域のライフライン」へと広がるかもしれません。

何が起こるか？

・「日本語教育の参照枠」に基づくカリキュラム整備を国が後押し
・外部アドバイザー派遣で学校単独では難しかった課題に対応可能
・モデル校事業に採択されれば全国的にプレゼンスが向上

学校にとっての活用法

認定を目指す学校にとって、これはまさに千載一遇の追い風です。

・教務主任を中心に早期に体制を整える → 国の支援を活用しながら教育課程を「参照枠準拠」にアップデート
・モデル校や研修事業に応募→ 学校の知名度と信頼性を高める
・採用・学生募集でのアピール→ 「国の支援を受けた認定水準の教育体制」と明記できる

この35億円を「制度対応のコスト」ではなく、学校のブランディング投資として使えるかどうかが勝負所です。

何が起こるか？

・小中高での日本語指導が常設化、専門人材を全国配置
・ICT教材の導入で授業環境が整備
・高校進学率の底上げを狙った補習・キャリア教育が拡大

教師のキャリア展望

これまでは「子ども日本語教育」は限られた専門領域でしたが、今後は全国規模で常勤ポストが拡大するかもしれません。。

・教育委員会や学校に直接雇用される道
・補習・放課後学習・キャリア支援など学校外の仕事も増加
・「子ども日本語教育」の専門性が新しいキャリアパスとして確立

日本語教師の役割は「外国人成人を教える」から「外国人児童生徒の学びと進路を支える」へ広がるかもしれません。

令和8年度の概算要求を一言でまとめると、

・学校にとっては

認定校を目指す最大のチャンス。
35億円の新規予算を活用し、教育課程を標準化しつつブランディングに直結させることが可能です。

・教師にとっては

キャリアが多層化する転換点。
学校、地域、児童生徒教育の3つのフィールドで、働き方の選択肢が一気に広がります。

合計300億円規模の予算は、日本語教育を「専門領域」から「社会インフラ」へと押し上げ、教師・学校双方にとって未来を切り拓くチャンスをもたらすかもしれません。